真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

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‡ なぜ酒を飲んではいけないのか ―慈雲『十善法語』

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1.飲酒を容認した慈雲

『十善法語』

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2.慈雲『十善法語』対訳

不飲酒戒を不貪欲戒に約す

原文
佛戒に差排あって。初入道の男子を憂婆塞と云ふ。女を憂婆夷と云ふ。此の輩先づ五戒を護持するじゃ。其の五戒の中には飲酒戒を制し。此の十善には飲酒戒を制せぬじゃ。なぜぞ。十善は世間出世間の通戒じゃに由て。飲酒は所論でなきじゃ。初入道の人も。少分無漏道に順ず。此の酒は諸漏に隨逐するに由て。制せねばならぬじゃ。十善の人。禮式に順じて。時あって酒を用ふる。過ぐるに至らぬじゃ。若し過ぎて威儀を亂すに至れば。此の不貪欲戒を破するじゃ。俗中の教に。禹は旨酒を悪んで儀狄を遠ざくとある。酒誥に。天降威我民用大亂喪徳亦罔非酒惟行。越小大邦用喪。亦罔非酒惟辠とある。詩の小雅に。賓之初筵。温々其恭。其未醉止。威儀抑々。曰既醉止。威儀怭々。是曰既醉。不知其秩とある。又孔子が。惟酒無量不及亂と。俗中にも。諸君子の心は。自から此の戒の具はることじゃ。經論の文に。酒に三十五事・三十六事の過失ありとある。在家の人は。抄出して常に憶念すべきことじゃ。又律中に。世尊祇多太子に飲酒を開したまふ。又末利夫人が。他の罪ならずして刑に中る者を救はんために。齋日なれども。此等の戒を破す。此を世尊に告す。世尊言はく。破戒ならず。善功徳を得ると。此の進不ことごとく憶念すべきことじゃ。

現代語訳
ブッダが制された戒には指図があり、初めて仏教を信仰した男性を憂婆塞という。女を憂婆夷という。これらの者達は先ず五戒を受け保つのである。その五戒の中には飲酒戒があり、十善には飲酒戒が含まれていない。なぜであるか。十善は在家者・出家者に共通する戒であるから、飲酒は含まれていないのである。仏教に信を置いたばかりの者であっても、わずかでも煩悩を離れる道に順じる。酒(を飲むこと)は諸々の煩悩を引き起こすものであるから、戒めなければならないのだ。十善の人は、(冠婚葬祭など世間の様々な)礼式に則って、時として酒を飲むことがある。しかし過ぎて飲むことはない。もし(酒が)過ぎて威儀を乱すようなことがあれば、この不貪欲戒を破ったことになる。俗世間の教えには、「禹は旨酒を悪んで儀狄を遠ざく」(『戦国策』魏策の取意)というのがある。「酒誥」(中国史上初の禁酒令)に、「天、威を我が民に降し、用いて大に乱れて徳を喪うこと、又酒惟れ行うに非ずということ罔し。越に小大の邦、用いて喪ぶること、亦酒惟れ辠するに非ざること罔し」とある。詩経の「小雅」には、「賓の初めて筵につく、温々として其れ恭し。其の未だ醉わざる。威儀抑々たり。曰に既に醉ふ止。威儀怭々たり。是れ曰に既に醉う。其の秩を知らず」とある。また孔子は、「惟だ酒は量無し、亂に及ばざれ」(『論語』郷党)と述べている。俗世間であっても、諸の君子の心には、おのずと飲酒を戒めるようになるのだ。仏教の経論の中には、飲酒には三十五事(『大智度論』)・三十六事(『沙弥尼戒経』)の過失があると説いている。在家信者は、これらを要約して常に心に留めて忘れないようにしなければならないことである。又律の中には、ブッダが祇多太子(祇園精舎の土地の元の所有者)に飲酒を許されたことが伝えられている(出典不明)。また末利夫人が、冤罪で処罰される者を救うために、斎日であったけれども、飲酒戒等の戒を破ったのであった。(末利夫人は)これを世尊に報告。ブッダは、「破戒にはならない。それは善功徳を得る行為であった」と答えられたのである(出典不明)。このような持戒・破戒の事例はすべて憶念しておくべきだ。

出典:慈雲『十善法語』(木南卓一編『十善法語』三密堂書店,P214)
[訳文:沙門 覺應]

沙門 覺應 (horakuji@live.jp)

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