真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

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‡ 『諸宗之意得』(序)

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1.原文

雙龍尊者口説
仏弟子たるもの。諸宗末世の風儀によるは非なるべし。其ノわけは天竺にては純厚なり。論ずるに及ばず。支那にて天台より天台宗出で。賢首より華厳宗出で。玄奘慈恩より法相宗出来。達磨より禅宗出来たれ共。此ノ時別々に宗旨に依て僧儀分れたる事なし。唯一相の佛弟子にて持戒清浄。そのうへに修学する所により。其の法門まちまちなるなり。

一相の佛弟子にて禅定修行心地発明を意がけるを禅宗と名く。一相の佛弟子にて華厳法華円頓の妙旨を修学するを教者と名く。持犯開遮等を精詳にするを律宗と名く。倶舎唯識を修学するを法相と名く。浄土等ノ宗も。準知すべし。皆悉く正法なり

今時宗旨宗旨に。なりふり袈裟衣迄ちがうたるは末世の弊風なり。本朝古より高僧の図真多し。行基時代の諸徳。又弘法伝教等の諸師。又慈恩善導等の諸徳の図真を見ルべし。此れも近代図工のあやまり。彫師のあやまりありあり。古のよし

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2.現代語訳

雙龍尊者口説
仏弟子であれば、色々な宗派(の独自の規則)や、末世*1の習慣に従うのは誤りというものである。その理由は(仏教発祥の地)インドには、(今日に言われるような宗派などはなく、)ただ釈尊の教えを純粋に奉じた弟子達があるのみだったからである。言うまでもなく、中国において、天台大師智[ちぎ゙]*2から天台宗が起こり、賢首大師法蔵[ほうぞう]*3より華厳宗が始まった。玄奘[げんじょう]三蔵*4ならびに慈恩大師窺基[きき]*5から法相宗が生まれ、達磨[だるま]大師*6より禅宗が創始された。だが、その当時(それぞれ異なる教義を信奉する宗が起こったと言っても)、宗旨が別だからと言って(他を排撃するというようなことはなく)、僧侶のあるべき姿、在り方そのものが、(宗派によって)分裂・相違するようなことは無かった。皆が同じ姿、同じ有り様の仏弟子で、等しく戒と律を保って清浄であった。戒も律も等しく守ってた上で、自らが学び修めるところにしたがって、その信奉する教えがそれぞれ異なっていたというだけなのである。

ただ釈尊の定めた戒と律とに則り、等しく同じ在り方なる仏弟子の中、(中国で生まれた「禅」という思想に基づく)冥想によって、心の本性を明らかにせんとするのを、禅宗という。ただ釈尊の定めた戒と律とに則り、等しく同じ在り方なる仏弟子の中、『華厳経』や『法華経』の円頓*7の奥深い教えを学び修めるのが、教者と言われる。律蔵の規定を事細かにし、(僧侶の在り方の)正しきと悪しき、如法と非法などを明らかにするのが律宗という。『倶舎論[くしゃろん]』*8ならびに唯識*9を修め学ぶものが法相(宗)と名付けられる。浄土などその他の宗も、これに準じて知るべきである。これらは皆全て、紛れもない仏陀の(八万四千といわれる程多岐にわたる正しい教え)、「正法」なのである。

今時の宗旨宗派によって、その行儀作法はもとより袈裟衣さえ違っているのは、末世の悪習である。日本には、古より徳高き高僧の図像が多く伝わっている。行基時代*10の諸々の高徳の僧や、また弘法大師空海や伝教大師最澄(さいちょう)などの諸々の偉大な僧侶、さらには慈恩大師窺基(きき)や善導(ぜんどう)など(中国の)高徳の僧の図像をも見て、参考にするとよい。(しかし)これらの中でも、(江戸)近来のものは絵師や彫刻師の間違いが多い。(だから)古いものである方が良いであろう。

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3.語注

*1 末世[まっせ]…仏陀の本当の教えが忘れ去られ、乱れ荒んだ時代。→本文に戻る

*2 天台大師智[ちぎ゙]…中国隋代の僧。天台第三祖とされるが、実質的な天台宗開祖。智者大師とも。天台山にて『法華経』の一乗思想と、龍樹(りゅうじゅ)の空思想との融合を計って独自の教学体系を築き、多くの著作を残した。→本文に戻る

*3 賢首大師法蔵[ほうぞう]…中国唐代の僧。華厳宗第三祖。香象大師とも。華厳教学の大成者で実質的な華厳宗祖。→本文に戻る

*4 玄奘[げんじょう]三蔵…中国唐代の僧。仏教を本場印度に学び、中国に伝えるために二十年弱留学。帰国後は膨大な数の経典翻訳事業を果たし、その訳は原典に忠実で新訳と言われる。法相宗開祖。→本文に戻る

*5 慈恩大師窺基[きき]…中国唐代の僧。玄奘三蔵の弟子で経典翻訳事業にも参加。多くの唯識関係の注釈書を残す。法相宗を大成。→本文に戻る

*6 達磨[だるま]大師…印度のバラモン階級出身であったというが未詳。中国来訪後、崇山少林寺にて面壁九年の坐禅を行い、始めて禅宗を開いた。→本文に戻る

*7 円頓[えんどん]…「円満頓足」の略。全てを瞬時に身に具えること。たちどころに最高の悟りを得ること。本来は天台の教義を指す言葉だが、時として他宗でも自らの教義の優れていることを意味して言うことがある。→本文に戻る

*8 『倶舎論[くしゃろん]』…『阿毘達磨倶舎論[あびだつまくしゃろん]』。説一切有部[せついっさいうぶ]の世親[せしん]が、経量部[きょうりょうぶ]の立場から、説一切有部の学説を批判的に説き著した論書。→本文に戻る

*9 唯識[ゆいしき]…我々が経験する一切の対象は、意識の所現であって幻のようなものにすぎず、真に実在するのは唯だ深層の意識たる第八アーラヤ識だけであるとする、大乗において中観派にならぶ二大学派の一。→本文に戻る

*10 行基[ぎょうき]時代奈良時代。→本文に戻る

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