真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

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‡ 『正法律興復大和上光尊者伝』

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1.原文

年四十二。自茲聲華日播。籍籍遐邇。根来寺常明僧正。歆尊者徳。授興地蔵院相伝秘密閫奥。瀉瓶無遺。僧正者。五智山曇寂闍梨之嫡嗣。醍醐之正統也。夫尊者起法幡於既傾之時也。一頼親證之懇請。法幡方起。未幾莫然長逝。悲夫。尊者曰命也哉。噫天喪予。作尼父歎辞以悼之。

覺賢覺法。亦相継而亡。尊者曰。羽翼未成。不可以高飛。今吾失羽翼矣。我且従吾所好。従是修然有隠栖志。遂卜居于生駒峰西。長尾瀑布之上。有禅尼智鏡者。為尊者造蘭若。扁曰雙龍菴。蓋尊者所奉釈迦尊像。下有雙龍。而扶持蓮座。故得名也。

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2.読み下し

年四十二。茲[ここ]自[より]聲華*1 日に播し、遐邇[かじ]*2 籍籍*3 たり。根来寺[ねごろじ]常明[じょうみょう]僧正。尊者の徳を歆[うけ]て、地蔵院*4 相伝秘密の閫奥[こんおう]を授興[じゅこう]して、瀉瓶[しゃびょう]*5 遺[のこ]すこと無し。僧正は、五智山[ごちざん]曇寂闍梨[どんじゃく じゃり]*6 の嫡嗣[ちゃくし]。醍醐の正統なり。夫れ尊者法幡[ほうばん]を既に傾くの時に起こすやなり。一に親證の懇請[こんじょう]に頼る。法幡*7 方[まさ]に起って、未だ幾[いくばく]ならざるに莫然[ばくねん]*8 として長逝[ちょうせい]*9 す。悲いかな夫、尊者曰く命なるなり哉[かな]。噫[ああ]天予を喪すと。尼父[じほ]*10 の歎の辞を作って以て之を悼む。

覺賢[かくけん]覺法[かくほう]も、亦相い継で亡す。尊者曰く、羽翼[うよく]*11 未だ成らざれば、以て高飛す可からず。今吾羽翼を失う。我吾が好む所に従わんと且に。是従[より]修然[しゅねん]として隠栖[いんせい]の志有り。遂に居を生駒峰[いこまのみね]の西、長尾瀑布[ながおばくふ]の上に卜[ぼく]す。禅尼智鏡[ちきょう]なる者有り。尊者の為に蘭若[らんにゃ]*12 を造り、扁して雙龍菴[そうりゅうあん]と曰う。蓋し尊者奉する所の釈迦尊像、下に雙龍[そうりゅう]有って、蓮座を扶持[ふじ]す。故に名を得るなり。

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3.現代語訳

尊者齢四十二のことである。次第に尊者の名声が日に日に広まり、広く世間に褒め称えられるようになっていた。紀州根来寺[ねごろじ]の常明[じょうみょう]僧正は、尊者の徳行に感じ入って、地蔵院流に伝わる奥義を授け、水をたたえた瓶から空の瓶へ残らず水を移し替えるようにしてもう教えることは何も無いほどだった。常明僧正は、京都五智山蓮華寺の曇寂阿遮梨[どんじゃくあじゃり]の後継者で、醍醐の法流をうけた正統継承者でもあった。尊者が法幡[ほうばん]を立てたのは、すでに世の中では仏教が乱れ荒んだ状況下でのことである。その法幡を立て(正法律を世に唱え)得たのは、なんと言っても愚黙親證[ぐもくしんしょう]の熱心な要請があったからこそである。(しかし)法幡が今まさに根付きつつある中、親證は、忽然としてあっけなくその人生を閉じてしまったのである。なんと悲しむべきことであろう。尊者は言われた「これも宿命というものであろうか。ああ、天は私に災いをもたらした」と。そして孔子の言葉をかり、悲しみの意を表す文辞をつくって、その死を悼んだ。

(しかし、それからも立て続けに)覺賢[かくけん]・覚法[かくほう]の二人も相次いで亡くなってしまったのである。尊者はこう言われた。「鳥は羽も翼がしっかりとしたものでなければ、空高く舞い上がることは出来ない。しかし、私は今、まさに羽と翼とを失ってしまった。ならば私は自分の望む場所に行くことにしよう」と。この頃から尊者は(再び)隠棲の志を強く持つようになり、ついに生駒山[いこまさん]の西に位置する長尾之滝の上に居を移した。智鏡[ちきょう]という禅尼があって、尊者のために阿蘭若[あらんにゃ]を建て、名づけて双龍庵[そうりゅうあん]とされた。思うにこれは、尊者が奉じられていた釈尊の像の下部に、二匹の龍があって蓮華座を支えているようになっていたことから、名づけられたに違いないだろう。

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4.語注

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